入居率の全国平均は何%?理想の目安と空室対策を解説

不動産投資を検討するうえで、「入居率」は収益を左右する最も重要な指標の一つです。入居率が高ければ安定した家賃収入が得られる一方、空室が続けばローン返済や維持費の負担が重くなります。
本記事では、全国平均の入居率データをもとに、地域・築年数・間取りによる傾向の違い、正しい計算方法、入居率が低下する原因と具体的な空室対策まで、不動産投資に必要な知識を体系的に解説します。
この記事でわかること
・全国平均の入居率水準と理想的な目標値
・地域・築年数・間取りが入居率に与える影響
・入居率が低下する原因と具体的な空室対策
賃貸物件における入居率の全国平均
賃貸物件への投資を検討する際、多くの方が気になるのが「全国ではどのくらいの入居率なのか」という点ではないでしょうか。不動産投資では家賃収入の安定性が収益に直結するため、実際の市場データをもとに全国平均の入居率や理想的な水準を理解しておくことが重要です。
全国的な入居率の推移と現状
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」(2024年11月)によると、全体(管理委託・サブリース)における2023年度の全国平均の入居率は95.8%で、過去5年間の調査でも96%前後で安定して推移しています。
また、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」をもとに算出すると、全国の賃貸住宅の入居率は約93%となっています(賃貸用の空き家率:6.8%)。
民間調査と公的統計の間には若干の差があるものの、いずれも90%台前半から半ばで推移しており、賃貸市場全体で一定の需要が継続していることが読み取れます。
ただし、全国平均はあくまで参考値であり、実際の入居率はエリア・築年数・間取りによって大きく異なります。詳しくは次のセクションで解説します。

首都圏:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県
関西圏:大阪府・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県・兵庫県
理想的な入居率の目安
では、実際の不動産投資において、何%を目標とすれば安定した経営につながるのでしょうか。
一般的に、賃貸経営では95%以上の入居率を維持できると、安定した経営状態と判断されやすいとされています。先述の「日管協短観」でも全国平均が95%台で推移していることを踏まえると、95%が一つの目安として意識されていることが分かります。
一方で90%が損益分岐点の目安であり、これを下回ると家賃収入が減少し、ローン返済・修繕費・管理費・固定資産税といった固定費の負担が重くなるリスクがあります。
金融機関のローン審査でも、満室想定だけでなく、一定の空室が発生した場合でも返済を継続できるかが重視されるのが一般的です。
地域や条件で異なる入居率の傾向
賃貸物件の入居率は、全国平均だけを見ても実態を正確に把握することはできません。
実際には、物件がある地域・築年数・間取りによって入居率には大きな差があります。そのため、不動産投資では表面的な利回りだけでなく、地域特性や物件の競争力まで含めて総合的に判断することが重要です。
都道府県別の入居率の違い
入居率は、物件がある地域によって大きく異なります。東京圏をはじめとする大都市圏では、進学や就職による人口流入が継続しているため、賃貸需要が比較的安定しています。総務省「住民基本台帳人口移動報告/2025年(令和7年)」によると、東京圏は10年連続で転入超過の状態が続いており、空室が発生しても次の入居者が決まりやすい傾向があります。
一方、若年層の流出が続く地方都市や人口減少が進むエリアでは、空室期間が長期化しやすいケースもあります。不動産投資では単純な利回りだけでなく、人口推移・再開発計画・大学や工場の移転情報なども含め、地域の将来性まで確認しておく必要があります。

築年数による入居率の変化
物件の築年数は、入居率に大きく影響する要素の一つです。築浅物件は外観や内装の印象が良く、入居希望者を集めやすい傾向がある一方、築年数が経過すると設備やデザインの古さが目立ちやすくなり、競争力が低下するケースがあります。
ただし、適切なメンテナンスやリフォームを行うことで競争力を維持できる場合もあり、外壁修繕や共用部の清掃といった基本的な管理状態も入居率に影響します。長期的な入居率の安定という観点からも、物件購入時の築年数の選択は重要な判断ポイントです。
間取りや物件種別による影響
入居率は、間取りや建物の種類によっても変化します。
ワンルーム・1Kなどの単身者向け物件は、学生や若手社会人からの需要が中心です。入学・就職・転勤シーズンには動きが活発になり、都市部では安定した需要が続いています。単身世帯数は今後も増加傾向が見込まれており、長期的な需要の底堅さが期待できます。一方、2LDK・3LDKなどのファミリー向け物件は、一度入居すると長期間住み続けるケースが多い特徴があります。
また、鉄筋コンクリート造のマンションは、防音性・耐震性への安心感から人気を集めやすい傾向があります。入居率は「新築か中古か」だけで決まるものではなく、エリアごとの需要やターゲット層に合った間取り・設備を備えているかどうかが、長期的な入居率に影響します。

東京都では、2020年時点で単独世帯が全世帯の半数前後を占めており、
単身者向け住居への需要が高い地域特性が見られます。
正しい入居率の計算方法
ここまで全国平均や地域・条件別の入居率を見てきましたが、実際に物件を検討する際には「その数字がどのように算出されているか」を理解することも重要です。
同じ95%という数字でも、計算方法によって意味が大きく変わるためです。特に投資初心者の方は、販売資料に記載されている数字だけを鵜呑みにせず、どの基準で算出されているのかを理解しておきましょう。
1.時点ベースの入居率計算
最も一般的なのが、時点ベースの入居率です。ある特定の日に何部屋が入居しているかを計算する方法で、計算式は以下の通りです。
入居率(%)= (入居中の部屋数 ÷ 総部屋数) × 100
例えば、10戸のアパートで8戸が入居している場合、入居率は80%になります。シンプルで分かりやすく、現在の稼働状況を把握しやすい点がメリットです。
一方で、年間を通じた空室期間や退去後の募集期間は反映されません。そのため、投資判断の際は現在の数字だけでなく、「どれくらい安定して入居しているか」まで確認することが大切です。
2.稼働ベースの入居率計算
より実態に近い経営状況を把握したい場合は、稼働ベースの入居率を確認します。1年間を通じて実際にどれだけ部屋が稼働していたかを計算する方法で、計算式は以下の通りです。
稼働入居率(%)= 実際の総入居日数 ÷(総部屋数 × 365日)× 100
例えば、10戸の物件で年間の総入居日数が3,000日だった場合、稼働入居率は約82.2%になります。
この方法では、退去後にどれくらいの空室期間が発生しているかを把握できます。稼働率が低い場合は、家賃設定が周辺相場と合っていない・募集条件に問題がある・原状回復工事に時間がかかりすぎているといった原因が考えられます。
3.賃料ベースの入居率計算
収益性を最も正確に把握できるのが、賃料ベースの入居率です。
満室時に得られる想定家賃収入に対して、実際にどれだけ家賃収入を得られたかを計算する方法で、計算式は以下の通りです。
賃料ベース入居率(%)= 実際の年間家賃収入 ÷ 満室想定年間家賃収入 × 100
例えば、実際の年間収入が900万円で、満室時の年間家賃収入が1,000万円だった場合、賃料ベース入居率は90%になります。
この方法の特徴は、「どの部屋が空室だったか」を収益面で評価できる点です。例えば、高額家賃の角部屋が空室になると、1室の空室でも収益への影響は大きくなります。そのため、金融機関が融資審査を行う際や、投資家が収支分析を行う際によく使われます。
3つの計算方法をそれぞれ理解したうえで、物件の収益状況を多角的に確認する習慣をつけておくことが、安定した不動産投資につながります。
不動産投資で入居率が低下する主な原因
不動産投資では、購入時に高い入居率を維持していた物件でも、時間の経過とともに空室が増えるケースがあります。入居率が低下する原因は一つではなく、地域の需要変化・設備の古さ・募集力不足など、複数の要素が重なって発生します。
空室対策を講じるうえでは、「なぜ入居が決まらないのか」を正確に把握することが出発点です。
競合物件の増加と需要の低下
入居率が低下する大きな原因の一つが、競合物件の増加です。人口が増えているエリアでは新築物件の供給が集中することがあり、築年数が経過した既存物件では空室が長引くケースが生じます。また、大学キャンパスの移転や工場閉鎖など、地域需要そのものが減少するケースもあります。
不動産経済研究所によると、首都圏の投資用マンション供給戸数は2024年に4,241戸と、2007年をピークに減少傾向が続いています。供給が絞られるなか、需要の安定したエリアの物件は競争環境の影響を受けにくく、希少性が今後も高まる可能性があります。

設備の老朽化とニーズの不一致
設備の古さも、入居率低下の大きな原因になります。宅配ボックス・モニター付きインターホン・無料インターネットなどが不足していると検索条件から外され、内見候補に入らないこともあります。築年数が経過するほど周辺の新築物件との設備差が広がりやすく、空室長期化につながるリスクが高まります。

調査期間:2026年1月14日(水)~1月21日(水)
調査対象:アットホーム加盟店 469店
管理会社の募集力不足
物件に問題がなくても、管理会社の募集体制によって入居率が下がることがあります。ポータルサイトに掲載している写真の質が低かったり、物件情報の更新頻度が少なかったりすると、入居希望者からの反響が集まりにくくなります。
また、他社への情報共有が不十分な場合、紹介機会そのものを逃してしまうケースもあります。現在は多くの入居希望者がインターネットで物件を探しているため、募集活動の質が空室期間に大きく影響します。

調査期間:2025年7月18日(金)~7月22日(火)
調査対象:2024年7月〜2025年7月に賃貸物件へ引越した人、または2026年3月までに引越しを予定している18〜59歳の男女910名
入居率を向上させるための具体的な空室対策
不動産投資では、空室が長引くほど家賃収入が減少し、収支に大きな影響を与えます。空室対策は物件購入前のエリア選定から、購入後の運用まで一貫して取り組むことが重要です。ここでは、購入前に確認すべき視点と、購入後に実践できる具体的な対策を解説します。
需要が安定したエリアの見極め
空室対策は物件購入後だけでなく、購入前のエリア選定から始まっています。人口推移や再開発計画、大学・企業の立地状況などを確認し、将来的にも賃貸需要が見込めるエリアを選ぶことが、最も根本的な空室対策といえます。
すでに競合が多いエリアであっても、単身世帯の増加が続く地域や交通利便性の高いエリアであれば、長期的に安定した入居率を維持しやすい傾向があります。ここからは、購入後に実践できる具体的な対策を見ていきましょう。
入居者ニーズに合わせた設備投資
空室対策の中でも効果が期待しやすいのが、設備投資です。すべての設備を一度に揃える必要はなく、比較的低コストで導入できるものから優先的に検討することがポイントです。設備投資には費用がかかるため、空室期間の短縮効果や家賃維持への影響を見極めながら、費用対効果の高い改善を積み重ねていくことが重要です。

調査期間:2025年7月18日(金)~7月24日(木)
調査対象:過去2年以内(2023年7月以降)に賃貸契約を行った、
全国の18〜29歳の一人暮らしの学生・社会人1,635人
適切な家賃設定の維持
空室対策では、周辺相場に合わせた適切な家賃設定が欠かせません。不動産ポータルサイトで同エリア・同築年数・同間取りの物件を定期的に確認し、少なくとも半年に一度は相場との乖離がないかをチェックする習慣をつけておきましょう。
家賃を必要以上に下げると長期的な収益低下につながる一方、相場を大きく上回る設定では入居希望者が集まりにくくなります。近年は家賃水準が上昇傾向にあるエリアも多いため、管理会社と連携しながら市場環境の変化に応じた柔軟な価格設定を心がけることが大切です。
信頼できる賃貸管理会社の選定
空室対策を進めるうえで、管理会社の選定は非常に重要です。特に地域密着型の管理会社は、そのエリア特有の賃貸需要や募集方法に精通しており、客付け力の面で強みを発揮するケースがあります。
優秀な管理会社は単に募集を行うだけでなく、家賃設定や設備改善について具体的な提案を行いながら、オーナーと連携して空室対策を進めてくれます。物件購入時から「そのエリアに強い管理会社かどうか」を確認しておくことが、長期的に高い入居率を維持するうえで重要なポイントです。
まとめ
入居率は、不動産投資の収益性を判断するうえで欠かせない指標です。全国平均は95%前後で安定しているものの、エリア・築年数・間取りによって実態は大きく異なります。
安定した入居率を維持するためには、物件購入前のエリア分析・適切な設備水準の確保・信頼できる管理会社の選定が重要です。95%以上を目標としながら、90%を損益分岐点の目安として収支計画を立てることが、長期的な安定運用につながります。
【参考元】
■日本賃貸住宅管理協会「市場データ(日管協短観)」
https://www.jpm.jp/marketdata/
■総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
■東京都庁「「東京都世帯数の予測」の概要」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2024/03/2024032701
■不動産経済研究所「2025年上期及び2024年年間の首都圏投資用マンション市場動向」
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/639/mdn20250805.pdf
■総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」
https://www.stat.go.jp/data/idou/2025np/jissu/youyaku/index.htm
■アットホーム「不動産のプロに聞いた!「新社会人の一人暮らしにおすすめの条件・設備」ランキング」
https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/questionnaire/pro-ranking-shin-shakaijin-202603/
■アットホーム「オンラインでの住まい探しに関する調査 2025 賃貸編」
https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/questionnaire/online-chintai-202510/
■アットホーム「ユーザー動向調査 UNDER30 2025 賃貸編」
https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/questionnaire/under30-202511/