不動産投資の売却|手取り額の計算例とタイミング・流れを解説

不動産投資の利益は、毎月の家賃収入だけでなく、売却時にいくら手元に残るかまで含めて判断する必要があります。
区分マンションは、売却価格やローン残債、売却費用の影響を受けやすい投資です。そのため、購入時から出口を意識しておくと、判断しやすくなるでしょう。
本記事では、区分マンション投資を検討中の方や始めたばかりの方に向けて、売却で後悔しないための考え方を解説します。
この記事でわかること
- 売却価格の決まり方と、手取り額の考え方
- 売却を検討するタイミングの見極め方
- 売却先(投資家向け・実需向け)の選び方と、売却の流れ
- 売却に備えて、保有中にやっておくこと
不動産投資の売却とは?出口戦略の基本

出口戦略とは、売却を中心に、投資を終える際に利益を確定させ、損失を抑えるための計画です。
家賃収入だけでなく売却損益まで含めて投資の成否を考える
不動産投資の収益は、保有中の家賃収入だけでは判断しにくいものです。売却価格に加えて、売却時の諸費用、ローン残債、税金まで含めて確認する必要があります。保有中に黒字であっても、売却時に大きな持ち出しが発生すると、投資全体では利益が残らないことがあります。
また、不動産は株式などと比べて現金化しにくく、売却に時間がかかる場合もあります。希望の時期や価格で売れるとは限らないため、売却の時期や方法には余裕を持たせておくと安心です。
区分マンションは購入時から売却先を想定しておく
投資用区分マンションの主な売却先は、収益性を重視する投資家です。一方、空室にして売却する場合は、自ら住むための住宅を探す実需層も買主候補になることがあります。ただし、専有面積、間取り、立地、築年数、管理状況によって、想定できる買主層は変わります。
購入時には、次の3点を確認しておくとよいでしょう。
- 将来も賃貸需要が見込めるか
- 投資家が融資を利用して買いやすいか
- 空室時に実需向けの選択肢があるか
この3点を購入前に確認しておくと、売却時に出口の選択肢を残しやすくなります。
出口戦略を考えずに売却すると起こりやすい失敗
出口戦略がないまま売却を急ぐと、相場より高い価格設定で長期化したり、急ぎすぎて安値で売却したりすることがあります。起こりやすい失敗は次の2つです。
- 手取り額を確認しない:売却価格だけで判断すると、ローン残債や売却費用を差し引いた後に、想定より資金が残らないことがあります。
- 現在の家賃が続く前提で評価する:退去後の想定家賃を見込まずに出口を考えると、次の買主の評価と食い違い、価格が下がることがあります。
購入時や保有中から出口を想定し、手取り額と退去後の家賃を確認しておくと、こうした失敗に備えやすくなります。
投資用マンションの売却価格はどう決まる?

売却価格は、将来の家賃収入を見込む「収益性」と、賃貸需要や建物の状態を左右する「資産性」の2つを中心に評価されます。
収益性:家賃・入居状況・利回り
投資用区分マンションでは、将来生み出す収益が価格評価の重要な要素になります。代表的な評価方法の一つに収益還元法があり、年間の純収益を還元利回りで割って、収益価格の目安を求めます。
例えば、年間の純収益が100万円、還元利回りが5%であれば、収益価格の目安は次のように計算できます(数値はあくまで計算例です)。
100万円 ÷ 5% = 2,000万円
年間家賃が高く、空室や滞納が少なく、安定した賃貸借契約がある物件は、投資家にとって収益を予測しやすくなります。反対に、空室中、短期間での入退去が多い、家賃が周辺相場より高い、家賃滞納があるといった事情は、価格の下落要因になることがあります。
表面利回りだけでなく、実質的な収益性も確認したいところです。管理費、修繕積立金、賃貸管理料、固定資産税、火災保険料、設備交換費用などを差し引いた収益性が、買主の判断に影響します。
資産性:立地・築年数・管理状態
収益性を支えるのが、賃貸需要につながる資産性です。駅からの距離、複数路線へのアクセス、周辺の商業施設・学校・病院などの利便性は、入居者募集のしやすさに影響します。賃貸需要が安定している地域では、空室リスクを抑えやすく、投資家からの評価も得やすくなります。
築年数も重要ですが、築浅であることだけが評価を決めるわけではありません。築年数が経過していても、立地がよく、修繕計画に沿って建物が維持管理されていれば、売却時の評価を保ちやすい場合があります。
区分マンションでは、共用部分の状態も評価に関わります。エントランスや廊下などが適切に管理されているか、長期修繕計画があるか、修繕積立金が不足していないかを確認しましょう。修繕積立金が不足していると、将来の値上げや一時金の徴収につながる可能性があります。
売却でいくら手元に残る?手取り額と税金の考え方

売却価格が高くても、手元に残る金額が多いとは限りません。売却を判断するときは、最終的な手取り額を確認することが重要です。
売却諸費用の内訳と手取り額の計算
概算では、次の式で計算します。
概算手取り額 = 売却価格 - 売却諸費用 - ローン残債 - 税金など
たとえば、売却価格1,500万円、ローン残債1,200万円、売却諸費用を約65万円と仮定すると、税金を除いた手取り額は235万円です(架空の計算例です)。
売却諸費用には、仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用、ローン一括返済手数料、管理契約の解約費用、敷金などの精算費用が含まれます。
- 仲介手数料:売買価格が400万円を超える場合、「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限
- 抵当権抹消登記の登録免許税:不動産1個につき1,000円(別途、司法書士報酬が必要になることがあります)
なお、投資用の物件は減価償却の影響で、購入価格より安く売っても譲渡益が出て、税金がかかることがあります。売却前に、不動産会社への見積もりや税理士への確認をしておくと安心です。
ローン残債とオーバーローンの注意点
ローンが残っている物件は、原則として売却時にローンを完済し、抵当権を抹消します。ローン残債は返済予定表だけでなく、売却時点の残高を金融機関に確認しましょう。
売却価格が残債を下回るオーバーローンの場合は、不足額を自己資金で用意する必要があります。売却価格が残債を上回っていても、諸費用を差し引くと資金が不足することがあるため、売却活動を始める前に資金計画を立てておきましょう。
不動産投資の売却タイミングはいつ?判断の3つの視点

区分マンションの売却は、「相場が上がったから売る」といった感覚だけでは判断しにくいものです。自分の資金・税の条件、物件の状態、外部環境の3つの視点から、売却を検討するタイミングを解説します。
資金・税の条件で判断する:残債・所有期間5年超
ローン残債と所有期間による税率は、売却を検討できる状態かどうかの目安になります。
■売却価格がローン残債を上回る時期
売却価格から諸費用を差し引いた金額でローンを完済できる見込みがある時期は、売却を検討しやすいタイミングです。年に一度など定期的に査定を受け、残債と相場を比較しておきましょう。
■所有期間が5年を超える時期
譲渡益が出た場合、所有期間によって税率が変わります。判定は、売却した年の1月1日時点での所有期間で行われます。
| 区分 | 所得税・復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5年以下 (短期譲渡所得) | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 5年超 (長期譲渡所得) | 15.315% | 5% | 20.315% |
譲渡益が見込まれる場合、5年超になる時期を待つことで、税負担を抑えられる可能性があります。ただし、税金だけで売却時期を決めるのではなく、空室の長期化や家賃下落などの影響も踏まえて、総合的に検討しましょう。
物件の状態で判断する:家賃下落・空室・大規模修繕前
家賃の下落や空室の長期化、これから必要になる大きな支出は、売却を考えるきっかけになります。
■収益性の悪化
周辺の家賃相場が下がっている、退去後の募集期間が長くなっている、入居者獲得のために家賃や初期費用を下げ続けているといった状況は、収益性が悪化しているサインと考えられます。
家賃収入が下がると、投資家の期待利回りを満たすために、売却価格も下がりやすくなります。月々のキャッシュフローが赤字に転じた場合は、赤字が続く前に、賃料設定、ローン条件、売却可能価格を見直しましょう。
■大規模修繕や設備交換の前
大規模修繕、修繕積立金の値上げ、一時金の徴収、給湯器やエアコンなどの設備交換が重なると、収支が悪化することがあります。これから何にいくら必要になるかを把握したうえで、売却時期を考えましょう。
ただし、大規模修繕の直前に売れば有利になるとは限りません。積立金が十分で工事内容が明確であれば、管理が行き届いていると評価され、買主の安心材料になる場合もあります。
外部環境で判断する:市況・金利・融資の動向
投資用マンションの価格は、不動産市況、金利、投資家向け融資の姿勢にも影響を受けます。金利が上昇すると、買主の返済額が増え、同じ家賃収入でも買える価格が下がる可能性があります。金融機関が審査を厳しくした場合も、買主の数や購入可能額に影響することがあります。
ただし、市況の予測だけで売却時期を決めるのは難しいものです。市況は参考にとどめ、ローン残債、家賃収入、修繕計画、税負担といった個別の事情を優先して検討しましょう。
投資用マンションの売却先は?投資家向けと実需向けの違い

売却先は、「パターン1:入居中のまま投資家へ売る」と「パターン2:空室にして実需層へ売る」の2つに分けて考えると整理しやすくなります。
ただし、入居者がいる間は貸主の都合で退去を求めることは通常できないため、パターン2は、入居者の退去などで空室になった場合に検討できる方法です。
物件の状況に応じて検討し、売却価格だけでなく手取り額で比較します。
パターン1:入居中のまま投資家へ売却する
入居者がいる状態のまま、収益物件として投資家へ売却する方法です。成約に向けては、書面の整備と適切な価格設定が重要になります。
■オーナーチェンジ売却のメリットと注意点
オーナーチェンジ売却では、賃貸借契約上の地位や敷金返還義務などを買主に引き継ぐ形で売却します。具体的な承継内容は、契約条件を確認してください。売主にとっては、退去を待たずに、家賃収入を得ながら売却活動を進められる点がメリットです。
一方で、買主は通常、室内を内見できないため、レントロールや賃貸借契約書などの書面で収益性を判断します。情報が不足していると、価格交渉や売却の長期化につながることがあります。
また、現在の家賃が相場より高い場合は、退去後の家賃下落を懸念され、見かけ上の利回りほど高く評価されないことがあります。空室や家賃下落がある場合は、パターン2の空室売却とも比較しましょう。
■売却前に整える書類と価格設定
オーナーチェンジ売却では、正確な収益情報を示すことが、買主の信頼につながります。売却前に、次の書類を整理しておきましょう。
- 収益に関する書類:レントロール(部屋番号、賃料、共益費、契約期間、敷金など)、賃貸借契約書、家賃の入金履歴
- 管理に関する書類:管理委託契約書、サブリース契約書(解約条件を含む)、管理規約、長期修繕計画、修繕履歴など
価格は、買主が期待する利回りと周辺の取引事例を基準に設定します。査定価格は成約価格を保証するものではないため、複数の不動産会社に査定を依頼し、金額の高さだけでなく価格の根拠と想定利回りを比較しましょう。
パターン2:空室にして実需層へ売却する
入居者の退去後に空室になった場合に、自ら住む目的の「実需層」へ売却する方法です。物件によっては買主の選択肢が広がる一方、空室期間中は家賃収入がなくなり、ローン返済や管理費などの負担が続きます。
■実需向けに売れる物件の条件
実需層は、利回りよりも住み心地や暮らしやすさを重視する傾向があります。次の条件がそろう物件は、買主候補を広げやすくなります。
- 居住ニーズに合う専有面積・間取り:単身者や夫婦、ファミリーが暮らせる広さがある
- 立地:駅近で、生活施設が整ったエリアにある
- 建物管理:管理状態がよい
一方、投資用ワンルームのように専有面積が小さい物件は、実需層が限られることがあります。空室であれば、買主が室内を内見できるため、日当たりや眺望、収納などを直接確認してもらえる点も特徴です。
■空室期間のコストと原状回復費用
空室売却では、退去後から売却完了までの家賃収入がなくなり、その間もローン返済や管理費は発生します。ハウスクリーニングや原状回復、設備修理の費用もかかります。
大規模なリフォームは費用を回収できないことがあるため、清掃や故障設備の修理など、必要な範囲にとどめることを検討しましょう。
空室になったら?投資家向けと実需向けの手取り比較

入居者が退去して空室になった場合は、投資家向けにも実需向けにも売却を検討できます。どちらが高く売れるかだけでなく、空室期間の家賃収入の減少や原状回復費用を含めた手取り額で比較します。
| 項目 | パターン1:投資家向け(入居中) | パターン2:実需向け(空室) |
|---|---|---|
| 重視される点 | 利回り、賃料の妥当性、管理状態 | 間取り、室内状態、居住利便性、住宅ローン利用条件 |
| 保有中の収支 | 家賃収入を維持しやすい | 売却完了まで家賃収入が止まる |
| 内見 | 原則難しい | 可能 |
不動産会社には、入居中のままの想定価格(オーナーチェンジ)と、空室にした場合の投資家向け・実需向けの想定価格を確認しましょう。そこから、家賃収入が止まる期間と原状回復費用を差し引き、手取り額で比較します。どちらが有利かは、物件の立地や間取り、入居状況によって変わります。
仲介と買取の違い
不動産会社が直接買い取る「買取」という方法もあります。一般に、早く現金化しやすい反面、仲介より価格が低くなることがあるとされています。条件は会社ごとに異なるため、査定の際に確認しておくとよいでしょう。
不動産投資の売却の流れ(6ステップ)

売却の方針が決まったら、次の流れで進めます。期間は物件や市況によって異なります。
1.査定の依頼:複数の不動産会社に査定を依頼し、価格の根拠を比較する
2.媒介契約の締結:売却を依頼する不動産会社を決め、媒介契約(専属専任・専任・一般)を結ぶ
3.販売活動:売り出し価格を決め、買主を募る
4.売買契約:買主と条件を調整し、売買契約を結ぶ
5.決済・引き渡し:代金を受け取り、ローンを完済して抵当権を抹消する
6.確定申告:譲渡益が出た場合は、原則として翌年に確定申告を行う。譲渡損が出た場合、居住用財産の譲渡損失の特例は、投資用には原則として使えない。他の所得との損益通算も認められないとされているため、税理士や税務署に確認する
手取り額は査定の段階で概算し、売買契約の前に最終の金額を確認しておくと、決済時の資金不足を避けやすくなります。
売却に備えて保有中にやっておくこと

売却先を選ぶパターン1・2とは別に、保有中の備えは、どちらを選ぶ場合も進めておけるものです。日頃の確認が、将来の売却価格と手取り額に影響します。
- 管理組合の状況を確認する:長期修繕計画、修繕積立金の残高、値上げや一時金の議論を、総会議事録などで定期的に確認します。管理組合の財政が不安定だと、買主に将来の支出増を懸念されることがあります。
- ローン残債を確認する:毎年、返済予定表や残高証明書で元本残高を確認し、売却価格の目安と比較します。特に購入直後は残債が大きく、売却時の持ち出しが生じやすくなります。
- 書類と収支データを保管する:パターン1の書類に加え、売買契約書、重要事項説明書、ローン契約書、確定申告書や年間収支表などを保管します。
これらを習慣にしておくと、どちらのパターンを選ぶ場合も、売却を考えるときに落ち着いて判断しやすくなります。
まとめ
不動産投資の成否は、家賃収入だけでなく、売却価格、ローン残債、諸費用、税金まで含めた手取り額で考えると整理しやすくなります。売却のタイミングは、残債や所有期間、物件の状態、市況を踏まえて、総合的に検討しましょう。
売却先は、入居中のまま投資家へ売る方法があり、空室になった場合は実需層へ売る方法も検討できます。いずれも手取り額で比較して選びます。保有中から建物管理やローン残債、書類を確認しておくと、売却を考えるときに判断しやすくなります。
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【参考資料】
国税庁「土地や建物を売ったとき」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
大阪府「不動産取引における仲介手数料の上限額」
https://www.pref.osaka.lg.jp/o130200/kenshin/houshu/index.html